作家の本棚14「書くことについて」

img074平茂寬は、スティーヴン・キングの小説が好きです。今回紹介するキング著の『書くことについて』小学館文庫は、三谷幸喜さんが朝日新聞に連載しているコラムで取り上げていたので、すぐに購入しました。小説ではなく、小説の書き方について述べたものです。

前半は、キングの半生について書かれていて、これがかなり面白い。特に、世に出るまでにかなりの数のボツ原稿を積み重ねていた話には驚きました。あんな凄い作家にも、やはりあったんですね・・・。ここを読めば、物書きなら誰でも、「俺だって!」と思いたくなります。
中盤以降は、小説執筆の心構えと手法が書かれています。
小説家は絶対にたくさん読んで、たくさん書かなければ駄目だ、とキングは言います。状況設定さえできたら、とにかく書き出す。頭の中に浮かんだことを休まずに書いていく、と。読むほうは、まさに手当たり次第で、出来の悪い小説を読んだときのほうが得ることが多いとも。
いやはや、読めばやる気が湧いてくるし、なるほどと思わせる記述が多い。やはりスティーヴン・キングは凄い!


作家の本棚13「江戸年中行事図聚」

390時代小説で季節などを表す場合に、「二月中頃」のように、月日を直接標記するやり方と、晩秋であれば「菊花が仄かに香った」とか、「落ち葉が風に舞う」とか、五感に訴える描写で表す方法があります。
江戸では、年中、いろいろな行事が行われていたので、これを描写することで、時季を表現する場合もあります。
「江戸年中行事図聚」三谷一馬著(中央文庫)は、著者が江戸時代の錦絵、絵本や黄表紙、人情本などの挿絵を模写した行事の絵を、随所に盛り込んだ本です。大変な労力を費やされて作成したことは間違いなく、こうした力作の成果を気軽に入手できる幸せを感じずにはいられません。

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まず、口絵にカラーで美人画が紹介されています。平茂寬は毎度のごとく見入ってしまいます(いつも五分~十分ぐらいでしょうか)。また、行事の風俗や女性の顔立ちのみならず、着物の柄、髪の結い方、簪、笄、重ねた着物の色の組み合わせ等、参考になるところが多々あります。

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本文中では、モノクロとなりますが、挿絵とともに当時の行事の内容が詳しく記述されていて、非常に役立ちます。
この絵は二十六夜といって、旧暦の七月二十六日の月を拝するときの様子を表しています。場所は高輪の浜。
まだ夕刻で、月が出るには早く、人が少しづつ集まっている時間帯のようです。ゆったりと涼んで海を見詰めている二人の女性から、風の心地良さが伝わってくるようですね。


作家の本棚12「これは面白い警察庁史」その2

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引き続き『警視庁史 明治編』の紹介をします。

写真は、口絵の一つで、警視庁の庁舎です(ただし、建て替えた第二庁舎)。警視庁は津山藩の鍛冶橋屋敷跡に建てられました。ちょうど今の東京駅のある辺りです。

 

東京の警察博物館には、最初に建てた当時の警視庁舎のパノラマ模型があります。赤門や火の見櫓など、津山藩邸であったときの状況が色濃く見えます。

この本の中で書かれている逸話の数々は興味深いものばかりですが、そのうちの話を一つ最後に・・・。
昭和17年までは防疫が警視庁の重要な仕事の一つでした。現在の保健所の役割も与えられていたわけです。伝染病が蔓延すると、その防圧に警察官が昼夜の別なく必死に活動しなければなりませんでした。特にコレラの流行のときは酷く、活動中に感染して殉職した警察官も少なくありませんでした。
中でも、コレラで死んだ患者の後始末(火葬場に運ぶ)は、感染の危険が高く、恐ろしい仕事であったと思うのですが、患者の後始末に呼び出されるのを心待ちにしていた警察官が多かったとか。役についた人は、ブランデーが飲み放題だったので、楽しみにしていたのです。


作家の本棚11「これは面白い警察庁史」その1

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小説執筆の参考にしようと、『警察庁史 明治編』を1年半ほど前に購入しました。警視庁史編さん委員会発行で、本誌は昭和46年に発行された第二版です。実に面白い内容の本でした。冒頭に、初代・川路利良から二代目大山巌・・・十九代までの警視総監(二代目までは大警視)の経歴と顔写真が並びます。川路大警視の就任が明治七年だから、今の警察の原点はここから始まるのです。初代から六代目まで薩摩の人物が並ぶところが興味深いです。西郷隆盛が東京を去ったときに、かなりの薩摩人がこれに倣いました。結果として政治の重要なポストのほとんどを長州の勢力が占めましたが、その中で、薩摩勢が牙城を守り続けた感のある役職です。

 

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写真は第五代警視総監の三島通庸です。鬼県令(知事)とも呼ばれた有名な人で、福島県や栃木県の県令を務めたときに、強引なやり方で道路整備を進めました。反対する動きがあれば、容赦なく弾圧した人です。県令時代には暗殺の標的にされたこともありました。一方では、切り開いた交通路が地域の発展に大きく貢献しました。
この人が警視総監となった期間のうち、明治19年から3年間は、警視庁を挙げての大慰安会が開かれました。なかでも一番盛大だったのは明治21年に品川沖で行われたものでした。海を埋め尽くすほどの船を繰り出し、花火を打ち上げ、さらには陸に上がっての大宴会・・。粋な計らいに、警視庁員の士気が大いに上がったとされています。


「胡白」という名の・・・2

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階段を上りきると風景が変わった。11

 

 

 

 

異空間に戸惑う。

 

 

 

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なんなんだこれは。

 

 

 

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みんな杯だ。全て店主が焼いたもので、全部で2万個飾っているとのこと。

 

 

 

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視点を近付けばそれなりに、杯の個性に気付く。
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さらに先に進んでみよう。ちなみに両側の壁は透明のガラスタイル。16

 

 

 

 

ようやく人影が見えた。ここだここだ。目的の場所は・・。

 

 

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『胡白』は、岡山近辺で採れた魚、地場野菜などを材料にした肴でお酒を飲むお店でした。器も、一枚一枚、それぞれ主人が焼いたものとか。

 


「胡白」という名の・・・

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岡山駅東口。高島屋の東側通りにある「胡白」は、こんな入り口で・・・。
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午後6時前。

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ガラスケースの中は。

 

 

 

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階段がある。

 

 

 

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上がっていくと、飾り窓に目を奪われる。6

 

 

 

博物館? それとも美術館なのか。それにしては、階段を上る足取りは妙にウキウキしている。7

 

 

 

 

じっと立ち止まって眺めるべきなのだろうが、なぜか足が先へと動く。8

 

 

 

 

うわっ、目映すぎる。9

 

 

 

 

 

中にはグラスが・・・。さあ、階段を上りきったぞ(続く)。


大浮世絵展の公式図録を入手しました

今月末に上京するので、その際に東京江戸博物館で開催されている「大浮世絵展」を見に行く予定です。今回は、事前に公式図録を取り寄せて、勉強してから訪れることにしました。

たいがいの図録類は値段の割に内容が充実しています。今回もそれを見込んで、
図録代2,500円と送料750円の計3,250円を投資しました。
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届いた図録(上の写真)を見てびっくり。予想を遙かに上回るコストパフォーマンスでした。ページ数360以上、厚さ3cmのずっしりとした中身は全編カラー。これでもかこれでもかという色鮮やかな浮世絵の連続に、溜息が出るばかり。文句なしの永久保存版でした。

図録の中には、以前に本サイトで紹介した浮世絵(町内のある方が所蔵されているもの)と同じものがありました。これも感激。
これから中身をじっくり読んで、特に見たい浮世絵をピックアップしていこうと思います。


津山市立図書館まつり講演会「作家の本棚」無事終了しました。

18日、津山市立図書館の研修室を会場に、津山市立図書館まつり講演会「作家の本棚」を行いました。平茂寬が、小説執筆の際に活用している書籍、参考になった小説などについて約1時間半、お話をさせて頂きました。
雪が予想されたこともあって、参加者は十数名とやや少なかったですが、皆さん、非常に熱心に聴講を下さり、以後の書籍『暴れ茶人無頼剣』販売、サイン会でも積極的にご購入を頂きました。この場を借りて感謝申し上げます。講演の準備をして下さった津山市立図書館にも心から御礼を申し上げます。
カメラを持参したのに、撮影を忘れてしまったのが心残りですが、参加者全員から、今回の講演について「たいへん満足」のアンケート結果をいただき、5月に再び講演をする運びとなりました。
なお、当日紹介した書籍は以下の通りです。本サイトでもおいおい取り上げて紹介させて頂きたいと思います。
山本周五郎「わたくしです物語」東成社、北沢秋『哄う合戦屋』双葉文庫、佐々木裕一『浪人若さま新見左近』コスミック・時代文庫、和田竜『のぼうの城』小学館、安倍龍太郎『等伯』日本経済新聞出版社、色川大吉『中公バックス 日本の歴史 21近代国家の出発』、堂本昭彦『明治撃剣家 風のごとく発す』徳間文庫、小堀宗実『茶の湯の宇宙』朝日新書、石井良助『続江戸時代漫筆』井上書房、岸井良衛『江戸・町づくし稿』上・中・下・別巻 青蛙房、野火迅『使ってみたい武士の日本語』文春文庫、明田鉄男『江戸10万日全記録』雄山閣、三田村鳶魚『鳶魚江戸文庫』1~38、矢田挿雲『江戸から東京へ』1~9、陣出達朗『変化九番櫻』和同出版社 「生きている幽霊」「悲願さかずき寺」、『津山市史』三巻、四巻、『~の生活』シリーズ 雄山閣 やくざ、刀鍛冶、忍者、与力・同心・目明し、兵法者、下級武士足軽、『江戸幕臣人名辞典』一~四、笹間良彦『江戸幕府役職集成』雄山閣、『武芸流派大事典』東京コピイ出版部、池上良太『図解 日本の装束』新紀元社、三谷一馬『江戸年中行事図聚』中公文庫、若桜木虔『誰も書かなかった江戸町奉行所の謎』中経文庫、『時代劇ファンのための大江戸歴史講座』晋遊舎、『絵でみる江戸の町とくらし図鑑』廣済堂出版、スティーヴン・キング『ゴールデンボーイ』、柴田錬三郎『江戸群盗伝』新潮文庫、尾佐竹猛『博奕と掏摸の研究』新泉社


今週の競馬予想「日経新春杯」

オルフェーブルが出走した海外重賞のフォワ賞の実況を見ていたときに、果敢に鼻を切っていく馬がいました。ステラウインドという名の馬で、アナウンサーの中継を聞くまでは日本の馬とは知りませんでした。

ステラウインドは条件馬ですから、勝つつもりで出走していたのではないと思います。ペースメーカーとしてか、あるいは、この馬が一緒に走るとオルフェーブルが落ち着けるとかいった事情があったのでしょう。言わば、噛ませ犬だったわけです。

踏み台になっていた存在が、密かに力をつけて、あるときから思いっきり弾けるケースが、どんな世界でもあります。今回は、そんな気持ちもあって⑥ステラウインドを軸にします。ヒモは①②④⑧⑨。


作家の本棚10「幕末から明治にかけて活躍した剣客たち」

img030『明治撃剣家 風のごとく発す』堂本昭彦著(徳間文庫)は、幕末から明治にかけて活躍した剣術家を取り上げたドキュメント小説です。剣道の有段者でもある職場の友人から紹介され購入しました。8人の剣客が紹介されていますが、いずれも魅力的な人物で読み応えがあります。

明治十年代には、警視庁を中心とした撃剣(剣道)の勢力争いがありました。冒頭から、当時の撃剣大会への熱の入れようが伝わってきます。
撃剣県令(知事)として知られた籠手田安定(名前からして剣道そのもの)が、剣客高山峰三郎を擁して警視庁剣撃に挑戦するところ(滋賀県庁が警視庁に挑戦状を叩き付けたと想像して下さい)などは、当時の県令の権力が窺われ、興味深いものがあります。

撃剣の場面ばかりでなく、8人の剣客それぞれの人生が描かれています。高山峰三郎は好きな道を全うしながらも、惨めな末路を進みました。三十年間熊本県警の警察官でいながら、一度として逮捕をせず、全て説諭のみで放免した逸話のある井上平太の話など、読みどころも多々あります。