第四章 時を積もる 3 (8月14日の投稿から連載している小説です)

(今回は現在と江戸時代の測量技術の解説になりました。興味のない方は写真や図を眺めて頂ければ、と思います)

 

現在の水準(高低差)測量は、水準儀(レベル)と標尺を使用する。二測点間の高低差を測るには、各測点にそれぞれ標尺を立て、中央に水準儀を整置して、前後の標尺の目盛りの差を見るのである。

( 写真は水準儀)

 

 

ここで江戸時代の測量器具として、量盤(けんばん)なるものを紹介する。量盤とは、四本の蜘蛛手の台で支えた一尺四寸の支柱の上に、縦一尺横一尺四寸の、平らな檜板を載せた構造をしていた。(量盤の図)

 

檜板の裏に、枘算(ほぞさん)と呼ばれる角材が打ち付けてある。枘算の溝に支柱の一端を嵌めて栓で止め、さらに枘算と支柱を斜めに繋ぐ棒で檜板を水平に固定する。

現在の平板測量で用いられる平板に、形状がよく似たものだ。平板測量では、平板上で、アリダード(二十五センチメートル程度の定規の両端に、覗き穴のある板を立てた測器)で目標を捉え、定規に沿って方向線を引く。

 

(平板の写真:左奥の定規がアリダード)

 

 

 

 

量盤でも、定規を載せ、真っ直ぐ目的を見込んで、盤上の紙に墨を入れる。すなわち、形状のみならず、使用方法も現在のと全く同じだった。

量盤には、もう一つの使用方法があった。水準儀として用いる方法である。
量盤は、支柱に固定されてはおらず、回転させ、地面に垂直にして使う方法もできた。つまり、垂直に固定した板の上辺で、水準儀同様に、前後に立てた竿を見通すのである。
竿には、尺度の目盛りと、上下に移動できる的(まと)が付けられている。量盤役の者が、量盤の上辺から一直線に見える位置に、的を動かすよう竿取に命じ、竿取が目盛りを読み上げる。なお、現在では、水準儀の望遠鏡で、観測者が直接、標尺の目盛りを読む。
ところで、水準測量を実施するために、水準儀と標尺を鉛直に立てねばならない点は、現在も当時も変わりがない。
そこで、量盤を水準儀として用いる場合には、前後二箇所に糸で鉛玉を釣るし、予め、量盤上の紙面に記した鉛直線と重なるよう調整した。一方、竿にも同様の仕組みが付けられていた。

 

 

量盤を使用した水準測量の図

 

 

(上記図面については、「江戸時代の測量図」松崎利雄著 総合科学出版から引用)


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