第六章 甲州流土木法 14 (8月14日の投稿から連載している小説です)

ばりばりっ。本堂の外で、枯れ枝を踏み折る音が鳴った。
黒頭巾の侍どもが俄に殺気立つ。嘉芽市も、閉じていた眼を、無意識のうちに開いた。
「おいっ、見て参れ!」
首領らしき男が、険しい声で周りの侍どもに命じた。
何処かで聞いた覚えのある声にも思えたが、なにぶん覆面越しの籠もった声音だ。誰の声であるかまでは判別できなかった。
頭上高く太刀を振り上げていた男が、そそくさと刀を鞘に収め、もう一人とともに、本堂から飛び出して行く。
荒っぽく抉じ開けられた格子扉が、自らの重みで、ぎいっと音を立て、ゆっくりと閉じた。
壊れた板壁の間から、弱々しい光が射し込み、本堂内に浮き漂う塵埃を、ぼんやりと映し出している。
ざわざわと枯れ草を掻き分け、音の主を捜し回る音が続いた。
「見付けたぞっ」
鋭い声が、冷えた空気を切り裂く。標的に殺到するが如く、足音がばたばたと続いた。
やがて、十徳姿の男が、背中を小突かれて本堂内に連行されて来た。嘉芽市は息を呑む。
「この爺め。こそこそと木の陰に隠れておったぞ」
周介は、嘉芽市の近くに、荒々しく転がされた。


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