第五章 普請始まる 13 (8月14日の投稿から連載している小説です)

現場に到着した嘉芽市は、茫然と立ち尽くした。
鍛冶場は崩れ落ち、地に伏した残骸から、ぶすぶすと燻る音が響いている。
「鍛冶場から火が出たように見えた。あっという間に火が回ってな。ただ見ておるしかなかったのじゃ」
鍛冶場を警護していた役人が、言い訳がましく説明を始めた。
やはり小鍛冶の中に、〝強硬派〟の手の者が潜んでいたようだ。
だが、いつまでも、しょげている間はない。今後に向けての対応に、頭を働かせねばならなかった。今すぐに為すべき二つの事項が、頭に浮かぶ。
一つには、火付けをした小鍛冶を発見し、捕えねばならなかった。
今一つは、小鍛冶どもの安否の確認だ。鍛冶場は立て直せば済む。が、小鍛冶を失えば、打撃は大きい。
小鍛冶どもは、難なく見付かった。飯場の入口の横で、車座に座っていた。ただし、三人の影しか見えない。
「一人足らぬではないか」
体格の良い年嵩の小鍛冶が、隣で、膝の間に顔を埋めている小男のほうを向いた。
「もう一度、さっきの話をしてみいや」
老小鍛冶は、どうやら親分格らしい。先に鍛冶場に入った時に、鑿の研磨をしていた男だ。
小男は、顔を膝の間から持ち上げ、おどおどとした物言いで語り始めた。
「伊助と二人一組で、鍛冶場に残っておりましたら、後ろ頭を急に度衝(どつ)かれたんですら。気が付くと中は煙でいっぱいに。たまらず外に逃げ出したんで」
伊助と聞き、刃物のように目付きの鋭かった男を思い浮かべた。


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