第七章 槌を振れ 13 (8月14日の投稿から連載している小説です)

「前をお退き下さいませ」
嘉芽市は、武三郎を押し退け、鍛冶場を出ようとする。
だが、武三郎は、岩塊の如く立ちはだかった。
「三人の武人が、弥十郎の周りを固めておると聞いた。鑿一つで勝てるとお思いか? 行けば、まさに相手の思う壺」
武三郎も、弥十郎を〝強硬派〟側の人間と目しているようだった。
「弥十郎を誅殺せねば、石工を呼び戻せぬのでございます」
嘉芽市は、弥十郎の威圧を用いた妨害行為について、掻い摘んで武三郎に伝えた。
「ほほう。ならば、簡単でござる。拙者が嘉芽市殿の代わりに、その不届き者の息の根を止めてくれよう」
武三郎は、小さな目の中に、冷ややかな光を浮かべた。
「手出しは無用! 弥十郎めは、身共の手で討ちたく存じまする」
嘉芽市は、感情が高ぶり、じわっと目に涙が滲むのを感じる。
武三郎は小さく天を仰いでから、嘉芽市に向き直った。
「されば、助太刀として参るのならば、依存はないでござろう」
親分は、二人には背を向け、黙って槌を打っている。
大きな背中が、何かを嘉芽市に語り掛けている気がした。


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