石見屋のおしげ

江戸の傑女のお話を、もう一つしましょう。その名はおしげ。

おしげは、音羽の石見屋という茶屋の女房でした。大変な美人であるうえに、物静かで慎み深い。ところが・・・・・。

ある日、おしげが、とある寺の法要へ参り、客殿の縁側に座って説法を聞いていました。すると、若い相撲取りが、幾人か、やってきたのです。当時の相撲取りと言えば、辺り構わず粗暴に振る舞うので、扱いに難渋することが多い存在でした。

やってきた相撲取りも同類です。おしげの女っぷりを見逃しません。さっそく側に行き、尻を撫でたりの狼藉を始めました。相手が力自慢の相撲取りですから、周りの者は、恐れて、誰も止めようとはしません。

その時でした。おしげが、相撲取りの手をむんずと掴むと、膝の下に入れて、押さえつけたのです。その力の強さたるや、相撲取りが真っ青になって、ものも言えなくなるほどです。涙まで流して、苦しがる相撲取りを押さえつけたまま、おしげは、澄ました顔で経文を唱えています。

ようやく放してもらった相撲取りは、這々の体で逃げ去りました。おしげは、大力女として、大いに話題になったとのことです。

清楚な美人が力持ち。今だったら、誰に例えればよいでしょうかね?

 


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です