作家の本棚13「江戸年中行事図聚」

390時代小説で季節などを表す場合に、「二月中頃」のように、月日を直接標記するやり方と、晩秋であれば「菊花が仄かに香った」とか、「落ち葉が風に舞う」とか、五感に訴える描写で表す方法があります。
江戸では、年中、いろいろな行事が行われていたので、これを描写することで、時季を表現する場合もあります。
「江戸年中行事図聚」三谷一馬著(中央文庫)は、著者が江戸時代の錦絵、絵本や黄表紙、人情本などの挿絵を模写した行事の絵を、随所に盛り込んだ本です。大変な労力を費やされて作成したことは間違いなく、こうした力作の成果を気軽に入手できる幸せを感じずにはいられません。

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まず、口絵にカラーで美人画が紹介されています。平茂寬は毎度のごとく見入ってしまいます(いつも五分~十分ぐらいでしょうか)。また、行事の風俗や女性の顔立ちのみならず、着物の柄、髪の結い方、簪、笄、重ねた着物の色の組み合わせ等、参考になるところが多々あります。

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本文中では、モノクロとなりますが、挿絵とともに当時の行事の内容が詳しく記述されていて、非常に役立ちます。
この絵は二十六夜といって、旧暦の七月二十六日の月を拝するときの様子を表しています。場所は高輪の浜。
まだ夕刻で、月が出るには早く、人が少しづつ集まっている時間帯のようです。ゆったりと涼んで海を見詰めている二人の女性から、風の心地良さが伝わってくるようですね。


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