作家として目指すべき肉体とSの誇り

最初に申しあげておく。「Sの誇り」と、題の一部に記したが、SMとは関係ない。服のサイズのことである。期待して読まれた方、ゴメンナサイ。

平茂寛は子供の頃から小柄で、服はいつもSサイズだった。それが身体コンプレックスの象徴に思えて、嫌で嫌で堪らなかった。

高校2年生からMサイズになった。身長は伸びなかったが、肉が付いたからだった。いやはや、Mサイズを着られるようになったのが本当に嬉しかったなあ。就職、結婚を経て、さらに肉付きが豊かになった。もはや、Mサイズは自分にとって当たり前になり、時には、Lサイズでも違和感なく身に着けるようになっていた。

ところが、今から約5年前。小説家になろうと決意した時に、だぶついた己の肉体が俄に気になった。筋肉が衰え、脂肪組織が優先した身体では、今後の現地取材や執筆の連続に耐えられないのでは、と、不安を抱いたのだ。そして何より、作家センセなるものは、思考活動に日夜消耗している姿を、周囲に顕示しなければならない。すなわち、間違っても、福々しい布袋腹であってはならないと、考えたのである。

物事への挑戦とは、まず外見から入るべきだ、と、平茂寛は考えている。小説家になりたかったので、まず小説家らしい体型を身に付けようとしたのだった。

食事の節制とトレーニングで身体を絞り始めてから、1年半後、ユニクロの試着室で、ついに、Sサイズの似合う自分の体型を確認した。

この時、生まれて初めて、Sサイズを着られる自分に、喜びと誇りを感じたのだった。

 


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です