超短編小説「なないろがし」三回のうちの第二回目

「なないろがし」のすぐ下に、一件の家があった。
二十年ほど前であろうか。ある村人が、不思議な一致に気付いた。
「なないろがし」下の家に発生する出来事と、葉の最終色が見事に対応していたのだ。
例えば、鮮やかな赤に染まった年、四十を超えた長女が思わぬ良縁に恵まれた。
葉色が真っ白になった年の暮れ、おばあさんが枯れるようにして死んでいった。
どす黒い紫に染まった年の有様は忘れることもできない。長男の嫁が産後の肥立ち悪く死に、生まれた子供も助からなかった。
いつの間にか、「なないろがし」の色で、件の一家に発生する出来事を予測し合うことが、村人の密かな楽しみにもなっていた。
ある年、「なないろがし」は、これまでとは一風変わった様相を見せた。夏前から落葉を始めたのだ。秋色濃厚な彩りに周囲が包まれる時季には、冬枯れの姿を晒していた。
あの家に、これまでにない不幸が起こる。火事か流行病か……村人達は囁きあった。
秋が終わり、冬が来た。雨ばかりが降り続いていたが、稲刈り後の降雨だったので、収穫には全く影響なく済んだ。
さらに年が変わっても、不幸な事件など何も起こらなかった。
老いた父親と息子は静かに暮らしていた。


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